この国の現状と行く末についての、ちょっと暗いお話し
先日、神戸市にある兵庫県医師会館で開催された、第29回兵庫県医師会医政フォーラムに参加してきました。
「医政フォーラム」とはなんぞや……、とお思いのことと思いますが、簡単に言えば、医者が政治を勉強する会合です(そのままやんけ)。ただ、政治と言っても、イラン情勢や、ウクライナ情勢を勉強するわけではありません。勉強するのは、医療の行く末…。
今日は、この医療の行く末について、ちょっと暗い話をしたいと思います。
さて、ここ10年間(2016年~2025年)で消費者物価指数(CPI)はどれくらい上がったと思います? なんと、14%も上昇しています。2016年に87円で買えていたものが、2025年には100円になった。そんな感じです。一方、医療の公定価格(保険点数)はどれくらい上がったと思います? 3.3%しかあがっていません。2016年に97円支払っていた医療行為が、2025年でも100円でやってもらえます。
これをもとに、医療機関で働く者の現状を考察しますね。
まず、その前提として、2016年の民間一般病院の損益率をご存じでしょうか? 正解は+0.1%。つまり、損得なし。医療機関って、良心的な経営をしてるでしょ。ま~、考察上は、ほぼゼロと考えていいでしょう。また、一般に、医療サービス産業において、売り上げに占める人件費の割合は50%とされています。これらのデータから、2016年の医療機関の損益を考えると、97円の収入を得るために、48.5円の原材料を買って、48.5円の人件費を払っていた、と単純化できます。さて、10年たって、2025年には、どうなったでしょう。原材料費を、消費者物価指数:CPIに変動しているとします。CPIは14%あがっていますから、48.5円から55.3円に上昇しています。一方、収入は公定価格で決まっていて、100円です。医療機関は、残ったお金 44.7円で人件費を支払わなければなりません。2016年の人件費は48.5円でしたから、3.8円(7.8%)の減額です。でも、現実問題、ここまで人件費を減額することもできません。ではどうするのか…。せめて、人件費を48.5円にするため、仕事を増やしています。
2016年に原価率(原材料比率)50%だったのが、55.3%にあがっているわけだから、人件費を48.5円にするためには、108.5円稼がなくてはなりません。医療機関は8.5%増しで働いているわけです。つまり、医療機関で働いている人間は、「もう限界」というくらい働いていた2016年より、さらに8.5%増しで働いています。一方、公定価格(保険点数)を決めている国から見た目線で考えると、2016年に97円だった医療費が108.5円、11.8%増しになります。これが、医療費増大です。
みなさん、わかっていただけました?これが、医療費増大の根本原因です。
しかし、実は、現実はもっと厳しい。我々の業界も、他職種とのバランスを取り、良い人材を確保するため、医療従事者の給与も上げていかねばなりません。オリコンの調べでは、実際、この10年間に看護師給与は12%あがっています。上記の試算・考察で言えば、人件費は48.5円×1.12=54.3円に上がっています。ここで、先ほどの試算と、同様の試算をします。
原価率(原材料比率)55.3%という条件のもと、この人件費を稼ぐためには、121.4円を稼がないといけません。「もう限界」というくらい働いていた2016年より、さらに21.4%増しで働いていることになります。これブラック企業です(>_<) さらに、公定価格(保険点数)を決めている国目線で考えると、2016年に97円だった医療費が121.4円、25.2%増しになります。国家財政を揺るがしかねない支出の増大です。ま~、実際の医療費増大率は2016年~2025年の10年間で15%ですから、10%分は企業努力で吸収しています。が、上がっていることは間違いありません。こういう状況ですから、国が医療費を抑制する→医療機関は自衛のため仕事を増やす→医療費がさらに増大する→国は医療費をさらに抑制する→医療機関は自衛のためさらに仕事を増やす……の無限ループです。ほんと「だれとく」です。
こんな業界事情は、「将来、医療業界で働こうかな~。」と思っている若者から見透かされています。実際、3年過程の専門学校は(全体として)定員割れにおちいり、4年制の看護大学の志望者も急激に減ってきています。さらに、2026年3月に行われた看護師国家試験の受験者数、合格者数ともに、前年比4000人減 (合格者は7.5%減)。全国の看護師新規採用人数が7.5%減ったんですよ。仕事は2016年比で25.2%増しなのに…。一人あたりの労働量は、2016年比35.3%増しなります。もう我々は耐えられません。わが国は、すでに医療崩壊の分水嶺を超えてしまっている…。医療機関で働いている者は、そう実感しています。
以上、この国の現状と行く末についての、ちょっと暗いお話しでした。
たかはし







