《研修医ブログ》JATECコース

初期研修医2年目の井元です。6回生のみなさんはそろそろマッチングを終えて学生として最後の夏休みを謳歌している最中でしょうか。

私事ではありますが、8月17,18日に横浜でJATECコースを受けてきました。

JATECとはJapan Advanced Trauma Evaluation and Careの略で、外傷患者の初期対応を習得するためのコースです。

「わが国の外傷診療の質は決して高いとは言えない。最近の研究では、適切な処置を施せば助かると推定される外傷死亡(Preventable Trauma Death:PTD)が、外傷死亡総数の30%を超えているとされている。そして、この多くが初期診療の診療機能に依存している。これを改善するには救急医療としての外傷診療システムの構築とこれに関与する医療従事者の診療技術の向上が急務である。」(JATECホームページより)

これがJATECの基本理念となっています。詳細な内容は割愛しますが、要はABCDEの安定化を図りいずれかに異常があれば介入していくことを習得することが根幹にあります。

蘇生に必要な手技・診療方法をマネキンを用いて2日間みっちり学びます。
スケジュールはこんな感じでした。割と疲れました。。(笑)

ちなみにJATECコースは大変人気がありまた救急医が優先的に受講できるようになっているため初期研修医で受けることはなかなか難しいです。
実際僕も1年目の夏ごろから申し込み始めましたが15回ほど不採用となりました(笑)
今回も最初は不採用でしたがキャンセル枠がたまたま空いていたのでラッキーで採用されました。

救急が有名な病院ではJATECインストラクターの方が救急科におられるところもあると思いますが、一般的な市中病院ではいないところも多いのではないでしょうか。また重症外傷もこないし関係ないと思っている方も多いかと思います。たしかに一般的な市中病院ではほとんどが軽傷でJATECの手順通りに診療する必要がないことが大半ですが、中には実は重症だったという症例を経験することがあります。
そういうときのためにもJATECにおけるABCDEアプローチは初期研修医でも最低限習得しておいたほうがよいと思います。

JATECコースは60000円超とかなり高額な受講料がかかりますし、受けるのにもハードルが高いですが、全国から救命救急センター長クラスの先生方も来られますしインストラクターの方も非常に教育熱心で受講してよかったと切実に思いました。(僕は病院に負担してもらいました(笑)。ありがとうございました。)
※事務局補足:院内規程に準じて支給されます。

今後は1年目のやる気がある先生に学んだことを教えていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

《指導医ブログ》学会発表についてPart 1~スライド作成の今と昔~(診療部長 兼 乳腺外科部長 Dr.丸山)

私が医者になった30数年前は、国家試験の合否を待たずして、4月上旬に、大学の外科医局に入局する制度であった。すぐさま、「オーベン・ウンテン(医者の内輪用語で上級医・下級医)」の関係で、日夜付属病院での研修が始まるのであった。その8月には、「出局」と言って、関連病院に赴任させられた。その出局の前には、必ずウンテンは、オーベンの指導のもと、経験した症例について、発表する(させられる)のが通例であった。確か「岡山外科学会」で口演したのが、私の学会デビューであったと記憶している。内容は、オーベンが血管外科グループだったため、血管関連の1例報告だった。今の私の専門とは、無関係な内容であった。

今の発表のスライドといえば、Power Pointを用いて作成し、個人のPCもしくは、USBで発表が通常である。しかし、その頃は、「ブルースライド」といって、ちょうどフィルムのネガを1枚ずつ台紙にはめ込んだ形で、投影してもらう形での発表であった。スライド一枚の説明が終わるごとに、「次お願いします」といって、投影機のそばにいる人に合図を送り、次のスライドを送ってもらう形であった。しかも、学会によって、発表スライドの枚数制限があり、一般口演では、多くの場合10枚までとされていた。Power Pointで作成する現在では、発表の作成及び修正は、発表直前まで可能であるが、ブルースライドは、原稿を外部業者に依頼し、スライドになるまでに約1週間を要し、直前に誤字があっても修正できないといった具合である。発表前には、大学医局カンファレンスで、事前に医局員の前で練習プレゼンテーションを行うのであるが、そこで修正を指摘されると、急いでまた修正した原稿を、業者に依頼するといった形で、汗(冷や汗)と涙を流したのである。Power Pointでは、カラー、グラデーション・アニメーションも自由に加工できるが、「ブルースライド」では、ネガフィルムなので、映し出されたままの画面(アニメーションができない)で発表するのである。しかも、作成料金は10枚で5~6万円、カラースライドだと10万円だったと記憶している。

巷では、「研究発表のためのスライドデザイン」なる本まで出版されている。「見た瞬間に伝わってしまうスライドを作れる」などの表題すらある。今や、自由自在にスライド作成ができるのだ。皆さんもPower Pointを駆使して、学会発表をしよう!

 

次回 Part 2では、「なぜ学会発表をするのか?」について、お話ししましょう。