月別アーカイブ: 2018年6月

来年採用予定の医学生(6年生)への病院説明会

今日は営業土曜。

この時期(梅雨)の営業土曜は、

来年採用予定の医学生(6年生)への

病院説明会が開催されます。

今年は計4回開催予定なのですが、

土日の予定もおおいたかはし先生は、

今日の説明会が、今年初参加の説明会でした。

今日、お話しさせて頂いた医学生さんが、

来年当院にApplyしてくださり、採用させて頂けるよう、

願ってます(o^。^o)

たかはし

術後補助化学療法とサルコペニア対策

昨日は、業務終了後、自転車を飛ばして

母校のお隣

独立行政法人 国立病院機構 姫路医療センターで開催された

講演会に参加・拝聴させて頂きました。

まずは、早く着いたので、

院内を散策^ ^

園庭の近くにあるローソンへ。

ここのローソンですが、口腔ケア用品が充実しているんです。

うちのローソンにも、こういった商品を、いろいろおいて欲しいな・・^ ^

さて、本題。

演者は市立豊中病院の今村先生。

お題は「胃がん手術で健康長寿を実現するためには

~術後補助化学療法とサルコペニア対策を中心に~」

でした。

いや~、いい勉強になりました。

ということで、恒例により、以下備忘録的にご講演内容をshareさせて頂きます。

1. 胃がん術後補助化学療法施行率は依然低い(>_<。。)
p-stage 2 or 3の患者さんは、根治的切除術後TS-1 1年内服が標準治療です。しかし、実は、ちゃんとTS-1を開始されているのは、39.1%だそうです。また、投与量率100%の完全完遂症例も、非常に少ないようです。日本のがん医療は、あまりにも「手術至上主義」なのではないでしょうか。術後化学療法が推奨されているがん種・Stageにおいて、術後化学療法なくして、がん根治はありえません。では、なぜ行われていないのでしょう。

2. 体重が減少するとTS-1が飲めない
TS-1療法の完遂率と相関関係があるのは、体重変化「だけ」だそうです。体重を維持することが、すなわち根治率を上げることになるようです。で、体重変化を最小限にする方法が、術後早期からのアミノ酸製剤投与と運動だそうです。また、運動療法を取り入れるそうです。過去の記事「ブログ緩和医療学会 2018 防備録 その1 ~がん患者と栄養について~ https://www.himemaria.or.jp/blog/kanwa/?p=3038 」でも述べましたが、がん治療をうまく行かせるためには、とにかく「喰え・動け」のようです。
ただ、アミノ酸製剤はまずい・・・。でも、根治を目指している患者さんにとっては「良薬口に苦し。」で、僕ら医療者が思っているより、アミノ酸製剤完遂率は高いようです。

3. どうやって、まずいアミノ酸製剤を飲んで頂くか
医療者の世界では「エンシュアはコーヒー味が一番まし」と思っています。しかし、代表的にアミノ酸製剤であるエレンタールのコーヒー味は『くそまずい』のだそうです^ ^。今村先生のお勧めは、ずはり「青リンゴ味のエレンタール」だそうです。しかも、「冷やしてストローで飲む。一気にのまず、朝作って、夕方までに一本飲めばOK。2本なら、なおいい。でも、青リンゴばっか飲んでると飽きるので、そういう時はコンソメ or マンゴー。コンソメは1回目はうまい。2回目は・・・・。だから、時々飲む程度で。」とのことでした。

4. p-stage 3に対する術後補助化学療法新時代
以前から、p-stage 3に対するTS-1の効果がいまいちだと言われてきました。いまは、TS-1+DOCが標準治療になりつつあるそうです。ただ、このTS-1+DOC療法ですが、あくまで基本はTS-1。これを間違えはならないようです。「TS-1完遂が最もだいじ。でも、余裕がある方は、その余裕のぶん、DOCを入れれば、治療成績が上がる。」というimageで治療するのだそうです。

母校奈良県立医科大学の緩和ケア研修会 2018年度版

以前、緩和ケア研修会の開催形態が変わり、

母校奈良県立医科大学に来ることもないかな~・・

な~んて記載させて頂きましたが、

結局、今年度も、

母校: 奈良県立医科大学の緩和ケア研修会に

講師・ファシリテーターとして参加させて頂きました。

開催形態が変化することもあり、

事前打ち合わせを充実させるため、

前日に橿原市へ・・・。

学生だった頃~(主に)研修医だった頃に通った居酒屋で

一献・・・・

そして、

通い続けた

ラーメン屋でいっぱい・・。

地元民しか知らない橿原グルメを楽しませて頂きました。

 

 

夜は、駅前に新しくできた

ホテルに投宿させて頂きました。

いや~、いい感じのホテルでしたよ。

第二の故郷:橿原市・大和八木駅前も変わりましたよ。

ほんと。

ところで、24日(日曜)朝は、

ちょっとだ早起きし、

休日で、誰もいない、母校の外来部門を

(勝手に)散策させて頂きました。

僕が、この病院で緩和ケアチーム・緩和ケア外来を立ち上げた当時、

「えっ、大学病院で『緩和ケア」・・・、頭オカシイんちゃうか・・。」と言われ、

病院内に告示すら、させてもらえなかった日・・。

悔しい思いをしましたが、

今や、緩和ケアは、大々的に広告されています(o^。^o)

隔世の感です。

 

 

 

さて、本番の研修会は、

新カリキュラムで、最も変更されたセッションを担当させて頂きました。

一番大変なセッションを担当させて頂いたったことは、

それだけ信頼されているんだと・・・

感じて(信じて・・)、勤めさせて頂きました。

愛する母校から、

信頼して頂いて、

お仕事をいただいていることに、

感謝の気持ちを感じつつ、

第二の故郷を後にさせて頂きました。

ま、再来週も、

ハンドボール部のOB戦に参加するために

来るんですけどね(*^_^*)。

たかはし

地域で繋ぐ心不全のトータルケア

昨日は当直明け・業務終了後、一旦自宅に戻り、徒歩で駅前へ。

浴衣祭りでごったがえし、道路に警察車両が並ぶなか、

アルモニーアッシュへ。

姫路循環器病センターが企画された

「地域で繋ぐ心不全のトータルケア」という研究会にお邪魔しました。

前半は、循環器病センターの大石先生のご講演、

後半は北里大学 循環器内科 猪又 孝元 教授のご講演でした。

大変勉強になりました。

では、以下忘備録的に、猪又 孝元 教授のご講演内容から・・・

(1)心不全の兆候はちゃんと改善した方が再入院率は低い
医学的に『あたり前』と思われていたことが、科学的な検証により『あたり前』でなくなったり、逆に有害であることがわかったりすることがあります。心機能低下・心不全に対するカテコールアミン投与も、この際たる例と言われています。この10数年間、カテコールアミン投与『やって当然でしょう。だから有効なはずでしょ。』という治療から、『いや、実は予後(余命)は改善しない治療なんだよ』への評価が変化(低下)しまりた。しかし、一方で、臨床的にカテコールアミンを用いて心不全治療することは、患者さんの症状緩和となり、利益になっていることも実感します。こういった現象を、かっこよく言うと「エビデンスとリアルワールドの乖離。」なんて言います。ただ、よくよく考えると、『Study designがリアルワールドを反映できていないだけ」ともいえます。で、この乖離を埋める研究をご紹介頂きました。Ambrosy AP, et al. Eur Heart J. 2013 Mar;34(11):835-43.です。この研究では、心不全の兆候(浮腫や呼吸困難など)を中途半端に残したまま退院して頂くと、結局再度入院することになる・・という結果を示しています。ま、(リアルワールドでは)当然と言えば当然の結果ですよね・・・。で、この研究を見ていた思います。ではっきりしました。やっぱり、中途半端な症状緩和は、だめなんだと・・・。明日からの、「がん」の診療にも生かしたい教訓です。

(2)心不全は首をみろ
心不全は、結局のところ、心臓のポンプ機能が低下し、(心臓より)下流に捌けない血液が、(心臓より)上流にたまる(うっ血する)という病態です。言い換えると『血管内うっ血』です。その後、血管内に鬱滞した血液から、血管外に水分が漏出し(血管外うっ滞・血管外うっ血)、種々の不都合な病態:浮腫・(肺の間質浮腫による)呼吸困難感増強などを来します。
さて、この病理病態を冷静に考えなおすと、血管内にうっ滞した血液の液性成分が血管外に漏出し、臨床的な不都合を発現するまで、タイムラグがあることは理解できます。また、心不全による諸症状は、心不全の病態を直接反映するものでなく、かなりサロゲート(間接的な)病態であることが理解できます。しかし、臨床的には、このかなりサロゲート(間接的な)病態を利用して、心不全の診断を行い、治療の効果判定をしてしまっています。ここに、現在の心不全治療・評価の限界があります。もちろん、毎日心臓超音波検査を行い、Ejection fraction (EF)を測定することが、ダイレクトに(直接的に)心不全の評価を行うことになりますが、これを日常診療で行うことは難しいと言わざるをえません。そこで、猪又先生が大切にされているのが、『首を診ること』だそうです。しかも、『内頸静脈のゆらぎを診ろ。』とのことでした。いわく「血管内うっ血は、静脈内圧を診ることにほかならない。右心房内圧をダイレクトに反映するのはない頸静脈圧。外頸静脈は、たしかに観察しやすいが、人によっては弁構造が発達しているので、右心房内圧をダイレクトに反映していない。内頚静脈は観察しにくいが、右心房内圧をダイレクトに反映している。しかし、冷静に考えると、意外と簡単。立位で、内頚静脈が存在する部位(側頸部)が『ゆらいで』いるなら、相当右心房内圧が上がっているので、入院が必要なほどの心不全と考えられる。」 ここで動画を拝見しました。たしかに、だれでもわかる『ゆらぎ』です。「ぼく(猪又先生)は、タートルネックのシャツを着ている人以外、駅で歩いている人が心不全かいなか、すべてわかる。」とおっしゃていました。納得です!!! また、「このままの状態(社会構造)が続けば、2025年、病院は心不全患者さんであふれる。そうならないためにも、心不全予防や早期治療が求められる。すべての人、医療者も非医療者も、全員『首のゆらぎ』を診ることができる社会を作れば、適切な心不全治療ができる社会になる。みんなで首を診よ~。」とも仰ってしました。すごく納得させて頂きました(^◇^)

(3)ヒトはアミロイドで死ぬ
近年EFが40-50%程度あるのに、心不全兆候を示す人が多いことが話題になっています。これを、業界(心不全業界)ではMid rangeと言うそうです。このMid range患者さんの30%にアミロイド―ジス(アミロイド心不全)が含まれているそうです。20年以上前、医学部で勉強していた頃、心アミロイド―ジスは、希だけど不治の病と教えられました。その心アミロイド―ジスが比較的多く認められるというこのにびっくりしました。そして、このアミロイド―ジスに対する治療薬が開発されつつあることにも驚きました。猪又先生は、Natureの記事を引用し「ひとは一定数『がん』で死を迎えます。これを乗り越えた方は、一定数『心・血管疾患』で死にます。しかし、その二つを乗り越えた方は、90%『アミロイド』で死にます。今日『意外と多いんですよ』と紹介した心アミロイド―ジスもそうですが、脳にアミロイドが沈着すればアルツハイマー型認知症です。」と仰っていました。我々は、社会は、心不全の早期発見・早期治療に取り組くことも求められていますが、アミロイドに対して、どう向き合うかも求められているのではないでしょうか。僕(たかはし)は、緩和医療科医であるとともに、認知症サポート医でもあります。このお話しを拝聴して、どうやら、医師人生の後半戦の課題が見えてきたように感じました。『がんの緩和医療』・『がん以外の疾患の緩和医療』そして、『アミロイド関連疾患の緩和医療』、これが、医師人生の後半戦の課題・・・・のようです。

たかはし

緩和医療学会 2018 防備録 その3 ~ステロイド再考~

今回の緩和医療学会では、副腎皮質ステロイドを考えるシンポジウムがありました。古い薬剤である副腎皮質ステロイドを、もう一度科学的に見直してみようという企画でした。気になったことを、箇条書き・備忘録的に書かせて頂きます。
1. 倦怠感に対して副腎皮質ステロイドを使用するなら、PPS 50以上の症例にせよ。
2. 使用するなら、鉱質コルチコイド作用のないものを使用せよ。
3. デキサメサゾンは、フッ素を含む分子構造。分解後(代謝後)に発生するフッ素がNeuropathyの原因になっている。
4. 副腎皮質ステロイドによる易感染性は、投与開始1ヶ月後から顕著になる (1-2週間の使用なら感染リスクは、あまりかんがえなくともよい)
5. デキサメサゾンが吃逆の原因になる。ちなみに吃逆治療は、バクロフェン (NNT=1.3) だけでなく、メトロクプラミドも結構よいが、予防投与は勧めないそうです。
6. オピオイド鎮痛薬を使用しているひと、もともと傾眠傾向のひとは、副腎皮質ステロイドが原因のせん妄が惹起されやすい。
7. 身の置き場のなさが出現したら、思い切って副腎皮質ステロイドはOFFすべき。
8. これらのことを総合すると、メチルプレドニゾロンをうまく使うとよい。

たかはし

緩和医療学会 2018 防備録 その2 ~鎮静と安楽死~

1. 鎮静の一般論 (社会医療法人財団聖フランシスコ会 姫路聖マリア病院の場合)
緩和医療科医としては働いていると、「どうせ助からないし、こんなに(体が)苦しいなら、いっそのこと・・・・。」と訴えられることが多々あります。こういった時、我々緩和医療科医は、「安楽死や自殺幇助はできないが、それほど苦しいならせめて麻酔で眠らせて、この苦しみを感じにくくすることは出来ます。」とお答えします。そうすると、全員ではないものの、一部のひと(患者さんや、そのご家族)は、鎮静(ひらたく言えば、浅い麻酔)を望まれます。ただ、いきなり無意識にしてしまうことは、ご家族が、あとから後悔されることもありますので、まずは一時的(数時間)鎮静(麻酔)してみます。これを間欠的な鎮静といいます。具体的には、緩和ケア病棟ではフルニトラゼパム1mg+生理食塩水 100mlや、ミダゾラム 5mg+生理食塩水 100mlを点滴します。この間欠的な鎮静行ってみると(受けてみると)、この間欠的な鎮静が『ほど良い』のか、間欠的な鎮静をくりかえすことを望まれる患者さん・ご家族さんも多くおられます。また、一方で、常時うとうつしつつ、夜はぐっすり寝たい・・と希望される方もいます。この場合は、持続的な調節性鎮静(浅い鎮静)と、間欠的な深い鎮静を来る合わせます。多くの方は、間欠的な鎮静のみや、持続的な調節性鎮静(浅い鎮静)+間欠的な深い鎮静を行うことにより、苦痛が最小化された、おだやかな(最期の)時をすごされます。ただ、時に、「も~、絶対に目が覚めないようにしてほしい」と訴えられる方もおられます。また、持続的な調節性鎮静(浅い鎮静)+間欠的な深い鎮静では、おだやかな(最期の)時を過ごすことができない方もおられます。その時は、最期の時まで、目が覚め、苦しみを感じてしまうことがないよう、持続的な深い鎮静を施行することもあります。

2. 鎮静の一般論 (緩和医療学会のガイドライン)
1.の項で記載した鎮静方法は、おおよそ緩和医療学会の鎮静ガイドラインに従っています。我々(姫路聖マリア病院 緩和ケア病棟)の方法と、ガイドラインの相違点は、ガイドラインでは間欠的な鎮静・持続的な鎮静ともにミダゾラムを第1選択薬にしているのに対して、我々はフルニトラゼパムを第1選択薬にしているところです。もちろん、鎮静ガイドラインではフルニトラゼパムを第2・第3の選択薬としていますので、僕たちの方法が、ガイドラインを大きく逸脱しているわけではありません。
ではなぜ、鎮静ガイドラインはミダゾラムを第1選択薬にしているのでしょうか。この答えは、おそらく「ガイドラインを作った先生達が、ミダゾラムを使いなれている。」からと考えられます。逆の見方をすると、ガイドラインを作った先生方は、『ミダゾラムの欠点: とくに耐性形成の早さ』については、ご存じないからと考えられます。ミダゾラムの欠点で耐性形成の早さは、麻酔科専門医ならよく知っていることなのですが、一般診療(内科・外科)の先生には、あまり知られていません。ただ、ミダゾラムの欠点で耐性形成の早さを知らないと、鎮静開始時にミダゾラム投与量を適切に調節しても、数日経過すれば耐性が形成され(ミダゾラムが効きにくくなり)、持続的な深い鎮静を行っているはずなのに、途中で覚醒してしまう・・・という、望ましくない事態が発生してしまう可能性があります。ただ、多くの終末期医療の現場では、鎮静開始後数日以内に、患者さんは帰天されることが多いので、一般診療(内科・外科)の先生方は、不都合を感じておられないのだと思います。しかし、理論上は、ミダゾラムで持続的な鎮静を行うのは、不都合がおおすぎます。これが、我々がフルニトラゼパムを第1選択にする理由です。
ともあれ、多少のtechnicalな相違はありますが、姫路聖マリア病院 緩和ケア病棟での鎮静は、概ねガイドラインに従って、施行させて頂いています。

3. 現代緩和医療の矛盾: 心理・実存的問題への対応
さて、緩和医療学会のガイドラインでは、終末期鎮静は「各種の緩和医療学的治療を行ってもなお、取りきれない苦痛を最小化するために行うもの。」としています。ただ、この『取り切れない苦痛』は、主に倦怠感などの身体的問題や、終末期せん妄などの精神医学的問題を想定しています。一方、そもそも緩和医療学的治療により『治療』することが困難な社会的苦痛や心理・実存的苦痛を対象としていません。ですので、「もう余命幾ばくもないし、生きていても意味がないから、もうわからないようにして・・。」言われても、緩和医療学会のガイドラインでは『いや~、そんなこと言われても、その訴えでは鎮静することはできませんな~。』というお答えになります。
でも、ちょっと考えてみて下さい。これって、ちょっとおかしいですよね。
緩和医療学会の疼痛治療ガイドラインでは、「がんの痛みは、身体の問題だけではなく、社会・心理・実存的な面もあり、それらを総合的に癒やすことが、がんの痛みの治療である。」とうたわれています。患者さんが、「体も痛いけど、こころも痛いんです。」と訴えれば、緩和医療科医は『身も心も痛いんですよね。わかりました、あなたの痛み、そう体だけではなく、心の痛みも癒やして差し上げましょう。」と言わねばならないのです。しかし、その患者さんが「体の痛みは麻薬で癒えたけど、心の痛みはどうしようもありません。もう麻酔をかけて、こころの痛みがわからないようにして下さい。」と訴えたとたん、きびすを返すように『心の痛みで鎮静はできません。』と言わねばならないのです。ほんと、矛盾しています。

4.矛盾を解消する方法(論法)
さて、この矛盾を解決する方法(論法)が二つあります。(1) 緩和医療が社会・心理・実存的苦痛を含む全人格的治療であるという立場を大切にして、社会・心理・実存的苦痛を理由に鎮静することを認めてしまう。(2) 社会・心理・実存的苦痛を理由に鎮静することを認めないのならば、そもそも疼痛治療をふくめて緩和医療科医は社会・心理・実存的苦痛を取り扱わない。
さて、みなさんは、どっちが正しい道だと感じますか。
もし、(1)の方向性を採ると、そのうち「私はお金がないし、治療費が払えないから、死ぬまで安い薬を使って眠らせといて。」とか、「私はお金がないし、治療費が払えないから、早いとこあの世に連れてって。」という訴えも聞き入れなければならなくなります。そして、議論は安楽死・自殺幇助に向かうことになります。僕は、社会が安楽死・自殺幇助について議論することは、大賛成です。でも、このままだと、なんだか『なし崩し的論議』になり、『なし崩し的結論』がでてしまいそうで、『危ういな~』と感じてしまいます。
このような理由で、いまの僕は(2)に近い意見を持っています。「冷たいな~。緩和医療科医なら、ちゃんと心のケアもしてよ!」と言われてしまいそうですが、緩和ケアという領域において、医師が担うべきは、ある種『科学的・医学的にわりきった『緩和医療』なのかもしれないな・・・と思っています。もちろん、これには、「緩和ケアは緩和医療を内含する。」という思いがあります。緩和ケアは、緩和医療より、もっともっと包括的で全人格的なケアです。その 緩和ケアを、しっかり行うことができる看護師・介護士・他のスタッフに恵まれているからこそ、医師は緩和医療に特化した仕事ができます。ありがたいことです。
とうことで、我々姫路聖マリア病院 緩和ケア病棟では、社会・心理・実存的苦痛を含む全人格的ケアを提供させて頂いています。そして、身体的問題・精神医学的問題に対しては、しっかりと緩和医療学的治療を提供させて頂きます。

たかはし

緩和医療学会 2018 防備録 その1 ~がん患者と栄養について~

今回の緩和医療学会では、藤田保健衛生大学の東口Prof一派が、研究に基づいた、いろいろな提言をされていました。

1. 「がんになりにくい食事」と「がん治療中に勧められる食事」は真逆
「がんになりにくい食事」として知られているのが、食物繊維たっぷりの食事。例えば、玄米を用いた一汁一菜とか・・・です。でも、そういう食事は、いきおい粗食となり、タンパク質が不足しがちです。一方、がん治療を有効に進めていくためには、筋肉量を維持し、筋肉を動かしつづけ、そして体重を維持し続けることが肝要。そのためには、総カロリーも必要ですが、タンパク質も必要。また、脂質も大切。特に生体内タンパク合成を不活化するBCAA: ロイシンはmTORを活性化し、タンパク合成・細胞合成を賦活化します。中鎖脂肪酸(MCT )は、グレリンを活性化し、食欲を増進します。食べることが、さらに食欲を増進するわけです。
さて、「暴飲暴食や贅沢な食事を続けたせいで『がん』になったんだと思います。抗がん剤治療を頑張りますし、これからは食事を見直したいと思います。ええ、もちろんお米は玄米ですし、一汁一菜、粗食にします。」と仰る方を見かけることがあります。実は、これ『間違い!』。まさに『真逆』です。でも、しらべてみると、約15%のひと(がん治療中のひと)が、こんな感じの食生活をしているみたいです。
一方「一汁一菜、粗食を心がけたれど『がん』になってしまいました。ま~、どれくらい生きれるかわからないから、美味しいもん食べますよ。ええ、ジャンクフードも食べるし、ビールも飲みますよ。」・・・と仰る方もいます。どうやら、これが、「がんになっても長生き」する秘訣のようです。

2. Sip Feedの勧め
とは言え、抗がん剤治療をすると、そんなにがっつり食べれるわけでもありません。そこで、お勧めなのがSip feeding。日本語で言えば、『ちびちび喰い』『つまみ喰い』です。なんだか行儀が悪い感じもしますが、病気になったら背に腹はかえられません。薬と思ってBCAA(分枝鎖アミノ酸)製剤を摂取してもいいですし、身近な食品として『卵』を勧めておられました。卵はアミノ酸含有率も高く、タンパク質も豊富。脂質もあり、理想的!! でも、ゆで卵は、何個も食べられないので、お勧めは『温泉卵』。

3. 化学療法前にこそ喰え!
化学療法時には、「どうせ悪心(化学療法の副作用)があるし、食べたもの吐くのしんどいから、朝ご飯食べずに病院に行こう。」ということになりがち。でも、実は化学療法前に、がっつりBCAAやタンパク、脂質を摂取した方が、化学療法後の悪心・嘔吐もすくないそうです。「おそらく、未知の『腸と筋肉のクロストーク』がいい結果をもたらしているのだろう。僕たちが思っているより、筋肉は多くを語っている。その筋肉の元は食べることだ。」と仰っていました。

4. ポリファーマシーに注意
最近の研究で、ポリファーマシー (何種類ものお薬を飲んでおられる種類のポリファーマシー)の方ほど、筋肉量が低下しやすいことが報告されたそうです。がん治療にも、ポリファーマシーは悪影響を及ぼしているみたいです。

たかはし

砥堀の鏡

ウユニ塩湖ってご存じでしょうか。

ボリビアにある湖で、雨季になると、

「天空の鏡」と言われる現象を観察することができる塩湖です。

NET上にも、数多くの写真がUpされているので、

是非ご覧になって頂きたいのですが、

昨日、これ(「天空の鏡」)ほどではないけど、

似たような現象を、観察することができました。

通勤に使っている道路(細い道)のそばの田んぼに水が張られ、

まだ田植えがなされず、

かつ風が吹いていなかったので、

さしずめ『砥堀の鏡』でした。

これで、晴れてたら抜群だったんでしょうが、

お天気は曇り・・。

今日は晴れているので、見に行きたい・・ところですが、

当直です(´^`。)

残念・・・。

明日には、田植えは終わってるでしょうね・・・。

 

では、気を取り直して、当直恒例の検食Upです。

まずは、今日の夕食全体像。

うっ、多い・・・(>_<。。)

今日はお楽しみメニューの検食日です。

どうやら、このラーメンがお楽しみメニュー。

そこそこ、いけました。

かれいの煮つけ。

これもま~ま~。

春巻きはGoodでした。

今日も美味しゅうございました(^◇^)

たかはし

緩和医療学会 2018 レポート1

昨日(金曜日)・今日(土曜日)、神戸で開催された緩和医療学会に参加しています。

色々勉強させて頂いているのですが、

今日の午後は、一般演題を、ブラ〜っと見て回りました。

で、目についた演題が、難治性・治療抵抗性疼痛を伴う転移に対する

IVR治療についての演題でした。

ホッホ〜、こりゃすげ〜技術だわ〜って見ていたら、

母校:奈良医大の放射線科(筆頭演者は知り合い・指導医はハンドボール部の先輩)

からの発表でした。

母校を、そして先輩を誇りに思う一日でした(*^_^*)。

でもね、

も〜ちょっと、

お金かけて

いい感じのポスターにしましょうよ・・・先輩・・・。

反り返ってまっせ・・・(>_<。。)

 

また、

緩和ケア病棟への紹介が遅く

たどり着けなかった症例の検討という演題も気になりました。

曰く

「とにかく急ぎます。」と紹介のあった症例は、

どんなに転院を急いでも、

転院できない(紹介元医療機関で帰天してしまう・・・(>_<。。))

という、ご発表でした。

ま、

緩和ケア病棟で働くものなら、

誰しも思っていることです・・・。

でも、そういう人にこそ、

正確な予後予想を元にした、

本当の緩和ケアを提供したいと思うのも、

緩和ケア病棟で働くものとして、

常に思うことでもあります。

このミスマッチ・・・、

なんとかしたいですね。

たかはし