皆さんこんにちは。姫路聖マリア病院 呼吸器内科 中島です。
最近、臨床研修終了後に呼吸器内科を選択する先生が最近少ないです。なぜ少ないのでしょうか。呼吸器内科医が現在おかれている現状について説明いたします。
日本呼吸器内科医の不足は、医療現場の重要な課題です。 特に呼吸器内科は高齢化の進展や感染症の増加といった状況において非常に必要が高い分野ですが、その数が現在十分に確保されていません。
1. 高齢化による呼吸器疾患の増加:日本は超高齢社会であり、年齢とともに増加する慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎、肺がんなどの呼吸器疾患が急増しています。また、慢性疾患としての喘息や、感染症としての結核、インフルエンザ、さらには新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など、呼吸器内科の専門的な対応が必要なケースが増えているため、呼吸器内科医のニーズが非常に高まっています。
2. 医師全体の偏在とキャリア選択:地方では医師全体が不足している上、都市部への集中が進むため、特に地方での呼吸器内科医の不足が深刻です。また、他の専門分野と比べて内科医自体の収入がやや低い傾向があることも、呼吸器内科医が少ない理由となっています。
3. 呼吸器内科の負担と専門性の高さ:呼吸器内科医は患者の緊急対応を求められることが多く、夜間の呼び出しや長時間勤務が避けられません。特に新型コロナウイルス感染症の流行時には呼吸管理や集中治療が必要な患者が増加し、これが医師の負担をさらに増大させました。また、呼吸器内科は専門的な知識とスキルが必要で、特に集中治療や呼吸管理には高度なトレーニングが求められます。このため、一般内科医が呼吸器内科医を兼任することが難しく、さらに医師不足が進んでいるのです。
4. 感染症リスクの高さ:呼吸器内科医は感染症の患者と接することが多いため、他の分野に比べて感染リスクが高いという恐怖もあります。また、感染防止のための厳重な管理が求められ、診療効率も低下するため、労働環境がさらに厳しくなっているのが現状です。
現在の課題としての呼吸器内科医の数を増やすには、研修や教育の強化が必要ですが、医師全体が不足している状況では教育リソースが十分に確保されていないこともあります。また呼吸器内科の専門医資格を取得するには高度な訓練が必要で、教育体制の充実が不足していると、新たに呼吸器内科を志す若い医師が減って大変になっています。
呼吸器分野は非常にやりがいがあり、ぜひ皆さんに興味を持ってほしいです。今後臨床研修をされる上で、ハードワークな呼吸器内科医の先生方の働き方がよい病院ほど、働きやすい病院としての指標になると思います。病院見学の際などは、一度呼吸器内科の先生とお話をされると、その病院の現状がわかり、研修先の病院の一つの決め手になるかもしれません。最後に、一人でも多くの先生方に呼吸器内科に興味をもってもらえるように当院も頑張っていこうと思います。是非一度病院見学に来ていただき、一緒にお話をしましょう!