《指導医ブログ》デジタル時代の勉強法(泌尿器科部長Dr.中塚)

泌尿器科の中塚です。

医学生6回生諸君は受験勉強の真っ最中でしょうか。
今回はデジタル時代の勉強法について少し語りたいと思います。

医学生はもちろん、研修医、指導医になっても医師という職業は常に勉学が欠かせません。例えば泌尿器科で言えば、私が医師になったころは前立腺癌の内服薬は2〜3種類しかなかったものがこの数年で7種類,8種類と、どんどん増え、新薬が出るたびに、これまでの常識が通じないという、まさに日進月歩。また昨今はコロナ禍で、現地での講演会、勉強会がオンラインに置き換わっていますが、開催の容易さからか、格段にその数が増え、習得しなければならない知識も増大の一方です。

私が医師国家試験受験に臨んだ10数年前と違い、現在はPC/MACやタブレット、スマートフォンといったデジタル機器で、様々な学習支援アプリが利用できる時代になりました。今回はその中から、EvernoteNotionという2つのノートアプリを紹介します。

私は昨年まではEvernoteをメインで使用していました。これはあらゆる情報をアプリ内に収納しようというコンセプトで、資料、論文その他すべてをEvernote内に放り込んで、必要時に逐一、検索して情報を引っ張り出してくるという使い方をしています。これはこれで便利なのですが、膨大なデータのなかから必要なものを検出するため、アプリの動作が重く、時間がかかるというストレスが出てきました。

そこで今年から、Notionの併用を試してみました。Evernoteは10年以上前からある古参ですが、Notionはまだ立ち上がって数年という若いアプリです。Evernoteがあらゆる情報をアプリ内に取り込むというinputだとすると、こちらはoutputすることによって知識を身につけるとう使い方が適しています。私のEvernote内には数多くの論文や疾患ガイドライン等のPDFファイルが入っていますが、その中から日々の臨床で必要な情報を厳選してNotionにテキストで書き出すという方法で使用しています。Notionは動作も軽く、フォルダツリー形式でメモの階層化が可能なため、Evernote内の必要な情報を整理して、すぐ取り出せるようになります。
こと受験勉強に厳選すれば、EvernoteよりもNotionのほうが、試験で必要な知識を整理するという意味で適していると思います。教科書、過去問からNotionにoutputすれば知識の体系化が期待できます。

今回はひとつの方法として私の勉強法をお示ししました。学生のみなさんが医師国家試験に合格され、当院でお会いできるのを楽しみにしています。

 

 

【事務局ブログ】「病院見学説明会」開催しました!

こんにちは。臨床研修センター事務局の古和です。
近畿地方も梅雨明けし、いよいよ「夏」です。

今年は近畿地方より先に関東・東北方面が梅雨明けしましたねฅ(º ロ º ฅ)
東北北部では四国、近畿、東海より早い梅雨明けとなるのは24年ぶりのことだそうです。
今年も暑い夏になるのでしょうね´´(;´ρ`A)アチィ・・・

(自宅にて:私のバイクドームで蝉が羽化していました)

さて、今年度も「病院見学説明会」を無事開催することができました♪
昨年は初コロナ禍だったので手探りで開催し多々反省点がありました・・・。
今年はそれを踏まえて工夫し、昨年よりも良い会になったかと思います。

学生さんが指導医研修医とお話しいただくことで、
当院の全体的な雰囲気や指導医等の人柄をご体感いただくことができます。
参加された学生さんも楽しんでいただけましたでしょうか。
今年参加できなかった学生さんは是非来年お申し込みください。
お会いできることを楽しみにお待ちしております。

★おまけ・・・7月9日(金)の出来事★
外科指導医5名にご指導いただきながら「縫合研修」を実施しました。
同期で切磋琢磨しながら日々成長しています。
事務局は「子どもの成長記録」を撮りためながら成長を見守ります(笑)

《研修医ブログ》症例報告(高橋調べ)

こんにちは、研修医2年目の高橋です。
もう7月中旬ですがどうやら6月のブログ担当だったようです。

今回の内容は救急外来や日常で学んだことに最新の知見(高橋調べ)を併せ、国家試験にも出題されそうな内容がありましたのでここで共有させていただきますね。

まずは、この暑い時期にしばしば遭遇する尿管結石についてです。我々研修医の対応としては、診断に始まり治療として鎮痛や除石目的の飲水励行等を行いますが、詳しい話は書籍に譲ります。ここでお伝えしたいことは、最新の治療法の「ジェットコースターに乗ることを指示」です。ジェットコースターってどういうこと?って思っている方も多いと思いますが、Marc A. Mitchell and David D. Wartinger, ”Validation of a Functional Pyelocalyceal Renal Model for the Evaluation of Renal Calculi Passage While Riding a Roller Coaster” , The Journal of the American Osteopathic Association, vol 116, No.10 (2016):647-652の論文に詳細が記載されています。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、2018年にイグノーベル賞を受賞した論文となっています。簡潔に言うと、ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンに乗ると腎臓結石が高確率では排石されるというものです。特に後部座席で64%の排石率を達成されたそうです。つまり、救急外来で行うべき尿管結石に対して行う最新の治療は、鎮痛薬とビッグサンダーマウンテンのファストパスの処方、あとはディズニーランドへの紹介状記載といったところでしょうか。特に後部座席に乗車するように言ってください。国家試験でも正解選択肢として「ジェットコースターに乗るように指示する」が出題されることを祈っています。ただしこのご時世、ディズニーランドに行く際は感染対策(マスク着用、ソーシャルディスタンス等)には十分に注意してください。

続いては、国試で頻出の鼓膜所見についてです。鼓膜所見で度々出題される鼓膜穿孔には、直達性と介達性があります。ここでは介達性鼓膜穿孔についてです。直達性は耳かき等により直接鼓膜を傷つけて穴が空けてしまうこと、介達性は鼓膜の内外への急速な気圧変化のために鼓膜に穴が空くことです。自身も大学生時代(5年生)、お恥ずかしい話お酒の席で、テンションが上がりすぎて介達性鼓膜穿孔を受傷しました(笑)詳細は省きますが、耳にビンタと言う名の空気砲をくらい鼓膜にポンと穴が空きました。翌日、当時耳鼻科で実習していた友人に耳鏡で見てもらい、鼓膜の穿孔を確認してもらったのを思い出しました。耳は痛いし、聞こえにくいなあと思いながら、その日は一日中手術に入っていたのも今は良い思い出です。ここでお伝えしたいのは、その実習後に耳鼻科を受診し、先生に伺った話です。実は鼓膜穿孔を見ただけでもある程度受傷機転が分かるそうです。耳鼻科を受診した際も「ビンタされた?」と一発で当てられたのを覚えています。穿孔部位の鼓膜が奥に陥凹していたら、僕と同様に陽圧がかかって穴が空いた所見、手前に隆起していたら陰圧がかかって穴が空いた場合だそうです。「手前に隆起した所見(陰圧)は大学生に多いんだよ」とおっしゃっていたのですが、原因はなんと「キス」だそうです///。もはや国試頻出のkissing diseaseです。耳を覆う形で耳を吸うようにキスをすると、陰圧がかかり鼓膜に穴があくようです。実は割といるそうです。国家試験に鼓膜穿孔の所見が出題されたら、ちょっと注意深く見てbackgroundを推察してみるのも面白いかもしれません。それと同時に、皆さんも耳にキスする際は是非お気をつけください。

最後に吸引性皮下血腫です。皆さんご存知キスマークの別称であり、再度kissing diseaseです。国試的にkissing diseaseと言えば、伝染性単核球症(ないしは介達性鼓膜穿孔)ですが、今回は吸引性皮下血腫についてです。キスマークが救急とどう結びつくのかといったら、実は脳梗塞の原因となるそうです。メキシコにて17歳男性がキスマークが原因で血栓ができ、それが脳梗塞を引き起こし死亡した症例があります。キスが死の接吻となってしまったのです。若年の脳梗塞では、原因として吸引性皮下血腫も是非鑑別にあげてしっかり身体診察をとるべきかもしれません。国家試験的には若年性の脳梗塞としてもやもや病とセットで吸引性皮下血腫を覚えておくといつか役立つかもしれません。

以上、国家試験で出題されそうなものをまとめてみました。あくまで高橋調べです。参考になったでしょうか。皆さんの勉強の助けになったらよいなと思います。

《研修医ブログ》夏なのにRSウイルス?

はじめまして、初期研修1年目の箱田です。
出身は高知県で大学は兵庫医科大学でした。
大学では軽音部でドラム演奏をしておりました。

姫路とはあまり縁はなかったのですが、実際に来てみると自然が豊かでありどこかしらに故郷の高知県と同じようなにおいを感じ快適に毎日を過ごすことができています。

さて季節はもう夏ですね。
私は今現在車を所持していないので、スーパーに行く際は徒歩で往復しております。なので帰りは地獄です…。
ですが8月には車が届くのでとても待ち遠しいです。

現在私は小児科を研修させていただいておりまして、処置などに関しても成人に対するものとは全く違うため四苦八苦しております。ただその分退院時に笑顔で帰っていく子供たちを見ると元気が出ますし、次も頑張ろうという意欲も湧いてきます。
ただ小児科で研修していて不思議なことが起きています。

それはRSウイルス感染症が圧倒的に増えていることです。
何が不思議かというと…

そうですね。RSウイルスの流行は例年であれば冬に多いからです。とても不思議です。この現象に関しては現時点ではっきりとした理由はわかってはいませんが、個人的には今回コロナ流行に際してマスク、手指衛星の徹底が十分に行われたことで流行する時期が冬から夏にずれたのかなと思っています。

皆さんもこのご時世であることに加え、気温も高くなってまいりましたのでこまめな水分補給を心がけて脱水症にならないようご自愛ください。それでは…。

《指導医ブログ》Nothing is permanent(放射線科Dr.)

医学生のみなさんこんにちは。放射線科Fと申します。

ウグイスの鳴き声が何とも心地よく放射線科の読影室に聞こえてきます。日本人に親しまれている春の鳥といえば、ウグイスということになるでしょうか。春先から、このウグイスの鳴き声が読影室に聞こえてきます。読影をしていると、ホ-ホケキョとなんとも心地よい感じで聞こえてきて、忙しい日々の診療の中で癒やされます。

新型コロナ感染症は誰もが関心のある事柄ですので、これについて書いてみようと思います。最初に断っておきますが、これを書いている私自身は、新型コロナの専門家でも何でもありません。

ル-チン検査のCTで、たまたま新型コロナ肺炎を疑う所見があることがあります。また新型コロナ肺炎確定症例でのCTで、思いもよらない合併症がみつかることもあります。

肺炎については、医学生の皆さんもすでにご存じかと思いますが、肺炎以外の全身合併症については、あまり経験されていないかも知れませんので、日本医学放射線学会総会で勉強したこと(自治医科大学附属さいたま医療センタ-の真鍋徳子先生のご講演を簡単にまとめたもの)を書きます。

周知のごとく、COVID-19が通常の風邪と違うのは、侵される臓器が全身多岐にわたるということと、通常の風邪のように1週間程度の経過で終わらない症例が存在するということです。これはコロナの感染病態に起因しており、サイトカインスト-ムにより炎症細胞の過活性を起こし、正常な細胞への攻撃、間接的に血管内皮に障害をもたらし、このため全身の様々な臓器に異常を来すと考えられています。Hypercoagulopathyを中心に、様々な合併症を起こし、場合によってはDICをおこしたり、血栓の程度も様々です。サイトカインスト-ムが起こった際には、全身のCTではどのように写ってくるのでしょうか。肺の炎症がそれほど顕著でなくても、直接ビリルビン値の著明高値がみられた場合、肝臓や腎臓の造影効果が不均一となっており、急性肝炎、acute kidney injuryの状態となっているようです。腹腔動脈の高度のspasm様の狭小化、膵炎も起こし、虚血による多臓器不全の状態となっている場合もあるようです。腸管の障害は、腸管気腫や門脈ガスなどの腸管虚血や腸管梗塞があり、原因として、腸管の直接感染、小血管の塞栓症、NOMI(非閉塞性腸管虚血症)が考えられています。COVID-19陽性の腹部CTでは、まれに腸管穿孔や胆道内出血などもきたすことがあり、腹部所見は多彩で様々な疾患をきたしうるようです。肺では、びまん性の浮腫に加えて、動脈性および静脈性の血栓症が起こっており、重症者の剖検例では80%に微小血栓症が認められたとのことです。

COVID-19の合併症や後遺症として、心臓障害が注目されているようです。呼吸器症状が前面に出ていると、画像上、心臓病変を疑うことは難しいのですが、COVID-19の胸部CT読影時に気をつけるポイントとして、心嚢液貯留をみたら、心臓病変合併を疑うことが重要であり、頻度は低いものの心臓病変が前面に出てくるような症例の報告もあります。冠動脈に異常のない心筋梗塞がおこる場合もあり、これは心筋の微小血管に多発血栓を形成している状態のため心筋壊死がおこるのですが、冠動脈には異常がないので、当然心臓CTではわからないとのことです。中枢神経病変も発症し、ウイルス関連のMERS(可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽度の脳炎、脳症と呼ばれる予後良好な疾患群)をきたすとのことです。

新型コロナ感染症後の後遺症についても注目されています。発症から3~4週以降の症状であり、PASC(急性期を経た後のコロナ感染後の後遺症)という新たな概念でLong COVIDとも呼ばれています。COVID-19治癒後でも心臓に病変があるとのことで、病変の主体はperimyocarditis(心膜心筋炎)と考えられており、様々な程度で何らかの心筋障害が高率に起きているようです。

注目すべきことは、この心筋の炎症は、ウイルスが体内から排泄された後の後遺症ということです。感染治癒後でも心臓の炎症が持続しているということについては、大変衝撃的と思います。PASC(急性期を経た後のコロナ感染後の後遺症)という新たな概念も重要で、コロナ感染者が増えるということは、肺炎治療後の患者さんが増えていくということになり、時間差で、今後ポストコロナの状態が増えていくということです。このように全身の臓器がタ-ゲットとなるので、今後も放射線科はさまざまな診療科から、画像のコンサルトを受けることとなります。

画像診断も絶えず変化し続けていて、まさに諸行無常と感じています。みなさん体調管理にはお気をつけください。