《指導医ブログ》Stay hungry, stay foolish(放射線科Dr.)

こんにちは。
姫路聖マリア病院 放射線科の医師Fです。

5月25日、全国で新型コロナ緊急事態宣言が解除されました。

まさに一時代が終わり、新たな一時代が始まる、WITHコロナ時代に誰も正解がわからずに生活しています。

コロナ不況が数字で明確化しています。4~6月はリ-マンショック後の経済ダウンをはるかに超えた大変な事態になっており、失業者は100万人以上と増加し、倒産件数が1万社を超える見込みで、企業収益は極度にダウンするとのことです。

すべての産業は、コロナの前の時代には戻れない、業務形態の変更や改変が余儀なくされています。

医療も同じで、例えばオンライン診療も挙げられています。その一方で放射線科(画像検査)は、CTやMRIなどの大型機器を移動することはできませんので、患者様に病院に来ていただいて、大型機器のなかに入って画像検査をしなければ、診療ができません。
いわゆる3密のうちの「密閉」した空間なのです。

物事を決断するには、迷いはあるし、失敗も怖いし、周囲の反応が気になることはあります。

 

Stay hungry, stay foolish 

故スティーブ・ジョブズ氏が、2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチでの締めくくりの言葉が、思い出されます。
当時はこの短いフレーズが非常に印象的でした。
コロナ後、WITHコロナ時代の先行き不透明な現実を考えるとき、いまさらながら普遍的な言葉だと痛感しています。学生のみなさん、励ましの言葉に聞こえてきませんか。

 

さて、暗い話ばかりしても仕方がないので、新型コロナ感染症関連で、ひょっとしたら国家試験に出るかも知れない(あるいは出ないかも知れない)CT所見についてみてみます。

2020年04月24日に出された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する胸部CT検査の指針(Ver.1.0)の中でCOVID-19肺炎のCT所見の典型的な所見として、

1) 初期は片側性ないし両側性の胸膜直下のすりガラス影、背側または下葉優位
2) 円形の多巣性のすりガラス影
3) 進行するとcrazy-paving patternやコンソリデーションなどの割合が増加
4) 器質化を反映した索状影の混在

が挙げられています。


(小田未来らCOVID-19肺炎の2症例:クルーズ船内感染例および市中感染例より転載)

ところで、CT所見でcrazy-paving patternって何?ということなのですが (知っている学生さんは読み飛ばしていただいて構いません)、すりガラス域内部にみられる不揃いの敷石様構造であり、マスクメロンの皮様構造といった方がピンとくると思います。肺胞蛋白症で使われはじめましたが、その他多くの疾患でも認められます。意義としては、肺胞性と間質性のいずれの病態でもみられますので、これらの鑑別には利用できず、この所見により鑑別診断を絞り込むことは難しいのです。

今年の日本医学放射線学会総会の教育講演(佐賀大の江頭玲子先生)で学んだことなのですが、

COVID-19の胸部CTは、器質化肺炎(OP)パターンをとるものも多くみられます。重要所見として注目されているすりガラス影内部の血管径の拡大は、その周囲に見られるcrazy-paving appearanceの所見と併せると、浮腫を処理する過程でのリンパ管拡張や間質浮腫を反映していると考えられるとのことです。

ただし、この所見は、COVID-19に特異的ではないのですが、パンデミックの状況下では、より危険なものを考慮しなければなりませんので、コロナ感染の有無を確認する必要があるとのことだそうです。

まだまだ油断できない日々が続きますが、みなさん体調管理にはお気をつけください。

《指導医ブログ》ストラテジーを持って(病理診断科副部長Dr.藤井)

病理診断科の藤井です。

最近は、通常の診療・診断にかかわる勉強と並行して、読書を習慣づけ、とりわけMBA (経営学修士) 用の書籍を少しひもといています。MBAというと堅苦しく聞こえますが、何もMBAのコースを履修しなくとも、本屋に行けばたくさんのMBA関連本やビジネス書が並んでいます。たくさんの本に目を通してきて、「医療は患者のためにあるサービス業であるとともにビジネスの一種の側面もあり、医療人にとってもその勉強は生きてくる」と確信するようになりました。ぜひ、一部の時間でビジネス書も読んでいただきたいと思います。

MBAの内容の最も根底にあり大事なことは、論理思考 (ロジカル・シンキング/クリティカル・シンキング) と問題解決能力です。これは、少し書籍を詳しく読めばごく当たり前のことを言っているようにも思えますが、より深く考察することで、医療の現場の多くの場面で有効です。また、経営戦略、と言えば会社経営のことを思い起こしますが、要するにストラテジー、成長戦略のことです。
個人の成長戦略として、ただがむしゃらに勉強するより正しく戦略的に能力を高めていくことを意識すれば、効率よく成長の軌跡を描けると思います。特に医学部高学年~研修医の時期は本当に重要な時期ですから、これらの点を心に留めて、いかに研修中~研修後の戦略を立て、自分の強み (コア・コンピテンスやケイパビリティ) をどのように構築していくかをとことん分析する機会としてもらえたら良いと思います。

医療は日進月歩で、非常に複雑です。医療従事者として適切な診療を過不足なく提供してゆけるようになるために、生涯勉強・教育を積み重ねてゆくことと思います。「人が成長するには失敗体験が必要不可欠」と言われています。成功よりも失敗の方が数段記憶に残りやすいものです。
失敗学の大家である畑村洋太郎先生によると、失敗は未知、無知、不注意、手順の不遵守、誤判断、調査・検討の不足、制約条件の変化、企画不良、価値観不良、組織運営不良の10に分類できます。まず「失敗」したことを認識できることが何より大切で、細かく分析し、それを糧にできるようにするべきです。悪い失敗は極力避けるべきですが、個人にとっての未知への遭遇は「よい失敗」のうちに数えられ、人間の成長へつながります。

医療者としての人生としても様々なレベルでの失敗があり得ますが、致命的な失敗は避けなければなりません。そこで、自ら最少の失敗を体験して知識を得ることに加え、他人の失敗例から上手に知識を得ることが、失敗から学ぶ最良の道です。すでに自分が習得した知識を使って失敗をシミュレーションすることを「仮想失敗体験」と呼び、その際、強く実感して体得すべく意識することが重要だそうです。論文・書籍・雑誌等の多数の症例にあたることでも仮想失敗体験 (あるいは仮想成功体験) が積めると思います。

また、自分の診療体験を通してしっかりと自分の中に根付いた知識 (体感学習) こそが、新たな知識を受け入れる素地をつくってゆきます。自らの経験を積み重ねることも大事ですが、経験をもとに論理的に思考し、知識の補強や仮想失敗体験を重ね、真の医療の理解と実践につながっていく事と思います。

明確な目標とストラテジーを持って、医療人の第一歩を歩んでいきましょう!