認知症と根治不能・進行がん その共通点。

昨日は通常勤務終了後、

キャッスルホテルで開催された認知症の勉強会を受講してきました。

認知症と、根治不能・進行がんは、

不治の病である点や、

診断時の心理・実存的問題、

症状進行後の社会性維持の問題など、

共通点が多く、

緩和医療科医として、

大変参考になる領域です。

今回もいくつか参考になる事柄を拝聴しました。

以下、忘備録的に・・・・

(1)RBA (Right based approach)
患者さん・家族が望むことを実現して差し上げること。これは、緩和医療・緩和ケアでも大切にしています。認知症領域でも同様のようです。これをNeeds based approach (NBA)といいます。たとえば、病状が進行し、自宅退院が困難となりつつある患者さんが、「ああ、早く元気になって退院したいな~。」とおっしゃったとしましょう。「退院したい。」というNeedsを満たすように、医療資源を投入すること。たとえば、医療用麻薬を持続注射しているなら、内服薬もしくは貼付薬に変更し、自宅でも鎮痛が図られるようにすることが、検討さます。これが、NBAとなります。しかし、考えてみてください。『自宅で普通に暮らす。』ことは、Needsでしょうか。冷静に考えると、これは、最低限の文化的で自律的な生活ですよね。基本的人権 (Fundamental human rights)ですよね。Needsとして、患者さん・ご家族さんから、聞き出すまでもないことですよね。なので、いついかなる時も、患者・家族が「退院したくない。」というNeedsを口にしないなら、自宅生活にむけた調整をすること、これはFundamental human rightsを守ることです。であれば、このFundamental human rightsをもと(Base)に、患者さん・ご家族さんにApproachする、Right based approachのほうが、より自然なのではないでしょうか。僕は、すごく納得できました。時代は、NBAからRBAへ動いているのかもしれませんね。

(2)ベルソムラとロゼレム
この2剤とも、当院緩和ケア病棟で頻用している睡眠薬(睡眠改善薬)です。最近の報告(研究)では、この2剤を使用することにより、せん妄を予防することができるようです。少し(値段の)高い薬剤ですが、使用する意義はありそうです。また、少し前になりますが、緩和ケア病棟で発生したせん妄に対して、抗精神病薬を小すると、OS(Over all survival:全生存期間)が短縮するという衝撃的な論文も発表されました。これが、すぐさま「緩和ケア病棟では抗精神病薬を使用してはいけない。」という見解を生むものではありませんが、どうやら妄は、治療から予防する時代になりつつあるようです。時代の変化は早いですね。

(3)遊びリテーションのすすめ
「遊びリテーション」・・・聞きなれないことばですよね。
「遊び」と「リハビリテーション」を組み合わせた造語で、専門家に指示されて目的もなく動くのではなく、ゲームや遊びを通して楽しく体を動かすことで、その人自身が自発的に動き出すことを引き出し、リハビリ効果を得ようとする方法のようです。たとえば、風船を使ったバレーボールや空き缶を使ったボウリングなど、心と体が結びついてできた種目があるようです。面白そうです。緩和ケア病棟の患者さんにも、適応されそうです。

高橋正裕
姫路聖マリア病院
緩和ケア内科

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